『あつまさ先生の道しるべvol.33』~スクールバンドの魅力(後編)~

前編では、NHK交響楽団主席トランペット奏者の長谷川智之氏が、音楽の道に進んだきっかけとなったエピソード(8歳の誕生日に、ニニロッソの函館公演を聴き、初めて生で聴くトランペットの音色に魅せられ、すぐに父に楽器を買ってもらった)を紹介しましたが、私も似たような経緯(教育大学3年の時、グレンミラーオーケストラの函館公演を聴き、金管楽器の艶のある響きに魅せられ)でトランペットを購入。教則本で独学し、ニニロッソの名曲「夜空のトランペット」をなんとか卒業までに吹けるようになった。

初任校の椴法華小学校には、当時鼓笛隊があり学校行事や村内行事などで演奏する機会が多かった。そんな折り、昭和49年1月、同窓生から学校に金管楽器の寄贈があり、新たにトランペット鼓隊が発足。その主たる指導担当にトランペットが吹ける私がなった。

思わぬ楽器を手にした子どもたちは、音階や簡単な曲が吹けるようになりたいと練習に励み、なんと昭和49年4月の入学式には、歓迎の演奏曲「こんにちはトランペット」を見事に披露できるまでになった。浜っ子のエネルギッシュで潜在能力の高さに感服。先輩たちの演奏を間近で聴いた下級生の好奇心を掻き立てた。後に伝統となる、椴小スクールバンドの先駆けとなった出来事であった。

学校独自の長期継続クラブ「トランペットクラブ」は、クラブ活動の固定時間外に行う特別クラブとして位置づけられた。練習時間は、第1・3週は金曜日、第2・4週は月曜日と金曜日のそれぞれ放課後の1時間。こうした練習の成果を、運動会前夜祭(昭和49年6月1日)の村内パレードで初披露。保護者や村民の方々にスクールバンドの魅力が徐々に浸透していった。

この時演奏した3曲は、「草競馬」「我は海の子」「ジェリコの戦い」。写真右、パレードを見守りながら同行している天満先生は、私の尊敬すべき大先輩。前身の鼓笛隊の指導者で、スクールバンドの良き理解者。未熟であった私の指導を全面的に支援してくれた。

同年8月4日の「函館港まつりパレード」には、バトントワラーの友情応援を得て初参加。

炎天下、隊列を揃え歩きながら金管楽器を吹きこなした子どもたちに沿道から大きな拍手と声援が。たった数か月の練習で、良くここまで出来たものだと感心させられた。

翌年(昭和50年)の8月3日、6年生の父母・田中教育長・交通安全推進委員会等のご支援で新調したユニフォームを着て「函館港まつりパレード」に再参加。演奏した曲は、「瀬戸の花嫁」。背景に写る旧函館駅舎が懐かしい。

この年の秋、11月8日には、前編でも紹介した「第3回函館地区小学校 管楽器交歓演奏会」に初出演。演奏曲は、レパートリーが増えて「瀬戸の花嫁」「サザエさん」「オーラリー」「エルランチョグランデ」の4曲。演奏会の最後には、出演校全メンバーによる合同演奏が。曲は、トランペット鼓隊の入門曲「こんにちはトランペット」。

会場は、大森小学校(現あさひ小)体育館。椴法華小学校のメンバーは、写真右端。
函館市内のスクールバンドメンバーと交流することができる絶好の機会となった。

翌年(昭和51年)10月には、「HBCことも音楽コンクール」管楽合奏の部に初挑戦。結果は、優秀賞。演奏曲は「トップ・オブ・ザ・ワールド」。演奏技量を磨く好機として、その後も毎年、後輩たちが果敢に挑戦。昭和53年度には、木管楽器(フルート・クラリネット・サクスフォーン)を導入。以降、吹奏楽編成で各種行事やコンクール等で、日頃の練習の成果を披露しながら表現力を高めていった。

昭和55年11月30日 市民会館大ホールで開催された第8回函館地区小学校管楽器交歓演奏会には、椴法華小学校5・6年生全員がステージで3曲「ある恋の物語」「マイアミビーチサンバ」「アメリカン・フィーリング」を熱演した。

 

そして、HBCことも音楽コンクールに挑戦すること6度目の昭和56年10月25日、念願かない最優秀賞を獲得し函館地区代表に。演奏曲は、狂詩曲「ノヴェナ」

卒業記念アルバム文集から引用

全道大会は道内各地区代表による録音テープ審査。結果は、北海道代表(全道一位)。村立小学校の快挙は新聞でも大きく報じられた。

卒業記念アルバム文集から引用

もちろん学校通信「くろしお」臨時版でも報じられた。

~スクールバンド特集号~

昭和49年 楽器の寄贈を受け、愛好者によるバンド編成をしスタートした本校のスクールバンドが、HBCこども音楽コンクールにおいて、念願の全道代表となりました。昭和54年からは本校の教育目標である「心豊かな子ども」「進んでやる子ども」の実践場面として、毎週火曜日、「スクールバンドの時間」を設け活動してきて折ります。そして、4月の入学式、運動会の学校行事から、村庁舎落成記念演奏、函館地区管楽器交歓会など年間を通して活動計画を立て実践活動を続けていることは皆様ご存じのとおりです。
この栄誉を受けるまでは、直接の指導者はもちろんのこと全職員の協力体制の指導と児童の熱心な練習の成果が、今日の輝かしい受賞になったものと思っております。このことは、全校児童の学習や生活のあらゆる面によい影響を与えるものと喜んでおります。
尚、この間、村理事者ならびに教育委員会や多くの方々より楽器の充実にご援助をたまわり、また父母のみなさんからは、練習にあたたかいご理解をいただき厚くお礼申し上げます。
来る11月29日、札幌の教育文化会館大ホールにおいて、全国一の演奏を目指し、全道代表としての演奏行うことになっています。ご声援くださいますようお願いします。
当時の学校だよりを引用

 

文部大臣奨励賞(全国一位)選考会を兼ねた北海道代表発表会終了後に撮影した記念写真。全国大会は全国7ブロックの代表13校によるテープ審査。

審査結果は、文部大臣奨励賞には届かなかったが、魂を込めて演奏した曲『ノヴェナ』は、LPレコードに刻まれ販売された。

バンドメンバーに卒業を間近に控えた6年生が多かったこともあり、6年学年PTAが資金を捻出し受賞記念と卒業記念を兼ねてLPレコードを制作。なんと有り難いことか。レコードジャケットのデザインや写真撮影、録音等は私が担当。

レコード盤には、コンクール曲、校歌、学校行事や対外行事で演奏した曲、更にはメンバーのお気に入り曲など15曲が収録。これは、みんなの『宝物』となりました。

楽器を手にし友だちと合奏する喜び、各種演奏会やコンクールで得られる緊張感と達成感、音楽を通じて広まり深まる交友関係など、スクールバンド活動で得られた体験はその後の人生でも大いに活かされたことでしょう。

あつまさ先生
あつまさ先生

次回は、「スクールバンドの魅力~続編~」ということで、次なる転任校(知内小学校)でのバンド活動を紹介します。
【公開予定日:2023年7月19日(水)】 ※予定を変更し、7月末に公開予定です!