その目的は何かと問われれば、多くの学校関係者や保護者は、「子どもの学力を高めること」「学習習慣をつけること」と思います。しかし、それを見直す動きが全国の小中学校で広がってきています。
岐阜市立岐阜小学校では2022年度から、ドリルやプリントなど一律で課す「宿題」を見直して、児童が自分で学習内容を決める「家庭学習」を導入し、全国から注目を集めています。
その狙いは、児童が主体的に学ぶ力を養うとともに、教員と児童の対話を深めることにあるそうです。
宿題といえば、学習したことの定着をはかるなどのメリットが期待できる反面、「やらされる」という強制的な側面もあり、嫌々やるものになってしまっている場合も少なくないのでは…。
そう考えるのは、岐阜小学校校長の藤田氏。社会が大きく変化している今、必要なのは未来を切り開いていく力であり、そのベースとなるのは自ら進んで学ぶ力だと。だから、児童自ら課題を見つけて自主的に学ぶ習慣を身につけることを目指し、2022年度から一律で課す宿題を廃止して、児童とその保護者が主体となって進める家庭学習を導入したとのこと。(そのための家庭学習の手引きを作成して)
岐阜小学校の家庭学習は、「自分のためになる学習」であれば内容は問わないとのこと。友だちとのボール運動や地域行事への参加、各種習い事などの活動も家庭学習として認めています。こうした体験も、考えたことを記録し、言語化することで「学び」に発展していくという考えからだそうです。
宿題の廃止について同校の児童は、「自分の興味があることをできるので、普通の宿題よりやる気がでる」「好きなことを知るのがとても楽しい」と意欲的。
一方、教員側にとっては、宿題を毎日見る必要がなくなったことで、「各担任は子どもと向き合う時間も増え、給食も児童と一緒にゆっくり食べられるようになったのでは」と藤田校長。
一律に課す宿題の見直しは2014年に東京都千代田区の麹町中学校が宿題を廃止したことで注目され、広島県や愛知県、茨木県の小学校などでも漢字や計算ドリルなどの宿題を見直す動きがあるようです。
麹町中学校の工藤校長は、著書で以下のように述べています。
何より重要なのは、学校の中で学習すべき内容を理解できるようにすることです。そして、「やらされる学習」ではなく、子どもたちが主体的に学ぼうとする仕組みを整えることです。宿題が子どもから自律的に学ぶ姿勢を奪わないようにしなければなりません。
道内では、函館市の五稜郭中学校が2019年度から生徒の自主的な学習を促すことを狙いに長期休暇の宿題を全学年で廃止したそうです。同校は休み前に身につけてほしい学習内容を生徒に示し、休み明けには確認テストを行ってフォロー。生徒は各自で学習や生活の計画を作成しているとのことです。
文部科学省は、長時間労働の是正に向けた教員の働き方改革という観点からも、宿題の見直しを推奨しています。2021年度に作成した事例集では、宿題やノート点検のあり方を見直し、自主的な家庭学習に転換することで年間約67時間の業務削減につながると紹介しています。
教員は教材研究に時間をかけ、授業で学力を育てることに専念し、家庭学習は一律の宿題を見直して、児童生徒とその保護者が考えて進める形にしたいものです。働き方改革のためにも、子どもの自ら学ぶ力を育てるためにも。
《北海道新聞2023.3.20記事 一部引用》
次回は、「スクールバンドの魅力」をご紹介します♪お楽しみに♪
【公開予定日:2023年5月24日(水)】