『あつまさ先生の道しるべvol.44』~学びの新たな選択肢「学びの多様化学校」~

あつまさ先生
あつまさ先生

前回の「不登校という選択」に続き、不登校児童の学びの場の選択肢の一つとして【学びの多様化学校】について紹介したいと思います。

「学びの多様化学校」とは

「学びの多様化学校」とは、不登校の児童・生徒の実態に配慮した特別の教育を行う学校のことで、平成16年に国内で初めて開校したときは「不登校特例校」と呼ばれていましたが、令和5年8月に名称が「学びの多様化学校」に変更されました。

一般的な学校では授業時間や学習計画が決められており、一定のペースで授業がどんどん進んでいくが、「学びの多様化学校」では不登校の児童・生徒に合わせて「特別の教育課程」を実施することが認められています。

「学びの多様化学校」のおもな特徴

  1. 年間の授業時間数は、学習指導要領にとらわれることなく、通常よりも少ない
    (標準授業時間数が小4~中3で1,000時間程度のところ、750時間程度)
  2. 朝の時間や放課後のゆとりを考え、午前2時間、午後2時間を基本とする
  3. 音楽・美術・技術・家庭を統合したクリエイティブな授業を設置
  4. クラス担任は2人とし、男女を組み合わせる
  5. 登校が必須ではなく、学校内の別の場所や家庭からのリモート参加もOK
  6. 給食はなく、お弁当は学校内のどこで食べてもよい
  7. 1日の最後は掃除ではなく、個別担任との短い面談
  8. 授業は習熟度別に行われ、自分の学力に最も適したクラスで授業を受けられる
  9. コミュニケーション能力の向上をめざし、ソーシャルスキルトレーニングの授業を実施
  10. 体験型学習(たとえば校外学習)を年4回以上実施し、多くの経験を積むことで、活動意欲や自立心を育む
  11. 一般の学校と同じく卒業資格を得ることができる

 

「学びの多様化学校」の現状

【学校数と学費】
令和6年1月現在、「学びの多様化学校」は全国に35校あります。(公立21校、私立14校)文科省によると、小中高を含め令和9年までに全都道府県への設置、将来的には300校の設置を目指している。
公立の場合は学費は無料ですが、私立の場合は学費を支払う必要があり、年額の平均は中学校で476,000円、高校で374,600円 (※平成28年1月文科省調べ)。

【フリースクールとの違い】
「学びの多様化学校」は、文部科学大臣指定の学校であり、通う場合は在籍している学校から転校(編入)することになります。一方で、フリースクールは地元の学校に籍を置きながら通う形が一般的です。

【入学条件】
①学校を30日以上欠席しているかどうか。

②不登校かどうかは、小中高各学校、または教育委員会など管理機関が、ある程度柔軟に判断する。

③不登校の児童・生徒以外は、「学びの多様化学校」の特別の教育課程の対象にならない。

 

「学びの多様化学校」に指定されている学校例

★NHK学園高等学校

当学園は平成16年から不登校経験者の指導に取り組み、平成20年に「学びの多様化学校」に指定された通信制高校。当学園は「NHK高校講座」の視聴や独自のネット学習システムなど、自宅でも学習が行える環境が整っています。「スタンダードコース」の場合は月1~2回、もしくは年1回(3~4日間)の登校でOK。不登校の概念がなく、自分に合った学びを選択できます。

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★星槎もみじ中学校

札幌市にある北海道唯一の「学びの多様化学校」。平成26年4月、閉校となった小学校の校舎を利用して開校。ここには、およそ150名の中学生が在籍。

「せいさもみじ」で検索!北海道札幌市の中学校 星槎もみじ中学校 | 学校法人 国際学園
「せいさもみじ」で検索!北海道札幌市の中学校 星槎もみじ中学校 のホームページ。不登校でお悩みの方の教育相談・個別相談も随時受付中!「授業の星槎」として共感理解教育をもとにした授業を実践しています。

 

<一日の流れ>
午前9時10分までに登校、授業は6時間
午後4時~帰りの会
毎日6時間目まで参加して当たり前という前提はなく、多様な生徒たちがそれぞれの興味関心に合わせたペースで学べるように配慮されている。一日の最後は、先生と生徒がマンツーマンで、その日をじっくり振り返る時間がある。

<安心して学べるように>
主要5教科の授業は、習熟度に合わせたクラスが用意されていて、自分の能力に合わせた環境で、安心して勉強に取り組める。また、個別に復習・補習をする時間もあり、学校に行っていなかった頃の学びを補うことができる。

<コミュニケーションスキルを身につけるために>
「SST(ソーシャルスキルトレーニング)」という授業では、生徒同士でボードゲームなどを楽しみながら、コミュニケーションスキルを身につけることを目指している。

<授業はどこからでも参加できる>
生徒全員が持っているタブレットを使って、学校内の別の部屋や自宅からでも授業にリモートで参加することができる。学校の中には、個別ブースが並ぶ部屋や、ハンモックのある部屋も。

<集中力が続かないときは>
校舎の中には、授業に参加するのがしんどくなったり、集中が続かなかったりする時のために、誰でも休憩していいスペースがあり、ここでは一人で読書したりイラストを描いたりして自由に過ごせる。

<生徒の希望から生まれた体験授業が目白押し>
夏休みや冬休み明けの1日目、2日目には、「みんなで音楽ライブ」「トランプで大富豪を極めよう」「ビニール凧を作って飛ばそう」など、生徒の希望から生まれた体験授業が目白押し。

<進路は?>
この学校では、生徒の約7割が通信制高校へ進学し、その他は、農業、運輸、情報科学、機械工学、経済、福祉など、より専門的なことを学べる高校や、高等支援学校、離島などにある特色ある高校など、進路は多岐に渡っている。

 

子どもに合わせた学びの場を

上記のような「学びの多様化学校」で行われている子どもたちのための様々な配慮が、どんな学校でも行われれば、すべての子どもが安心して学んでいけるのではないかと思います。「学びの多様化学校」が増えていくことをきっかけに、子どもの特徴に合わせ、気持ちに寄り添う教育が、社会の隅々まで広がっていくことを希求したいものです。


次号は、「音読と計算で子どもの脳は活性化」
【公開予定日:2024年6月26日(水)】