最先端脳科学者である東北大学の川島隆太教授の研究によると、脳の司令塔である前頭前野は、文章の「音読」と単純な数の「計算」ですごく活性化することがわかったそうです。意外なことに、素晴らしい数学能力を誇る大学の教授レベルと大学生を比べても、さらには小学生や中学生で実験しても、その結果はまったく同じだったということです。
さらに各種のデータを整合したところ、『読み・書き・計算』が脳の全身運動になることがわかったそうです。そうしたスキル(技能)を磨くと基礎的な学力が鍛えられ、そのうえに脳の前頭前野が逞しくなって、人としての判断がしっかりできるようになり、子どもたちの「考える力」や「生きる力」までが育っていくとのことです。
脳の意外な性質
音読と計算をすると脳の多くの場所が活発にはたらいて、その機能がよくなることを突きとめた川島教授の研究によって、複雑な思考をする時よりも、数かぞえや音読をするほうが、ずっと脳の中を流れる血液の量が増えて、一段と活性化することがわかったそうです。
音読は「見る」「読む」「聞く」という作業を同時にこなさないとならないため、大脳の70%以上もの神経細胞が活発にはたらき、音読するスピードを上げると、脳がさらに活発にはたらくこともわかってきています。一字ごとの拾い読みよりも、できるだけ速く読むほうが脳を活性化させることになるそうです。
★集中力と記憶力の向上
脳の前頭前野は、記憶や思考、判断などを司る部分。脳内の前頭前野が活性されることで、集中力や記憶力も向上するといわれています。そのため、勉強の初めに取り入れると効果的です。近年では、朝の授業が始まる前に音読を取り入れている学校が増えてきているそうです。こういった学校からは、その後の授業で集中力が増したという報告が全国から寄せられています。
★語彙力と読解力の向上
音読することで、語彙力や読解力も向上します。なぜなら、声を出して読むには、漢字の読みや単語の意味、文の流れや文章の切れ目を考えながら読むことが必要になるため、自然と、文章構成や論理展開を考えるようになり、文章理解も進みます。また、この積み重ねで、確かな読解力が積みあがっていきます。
★黙読が速くなる
音読を積み重ねることで、文章構造や論理展開を理解する力がつき、その効果が黙読でも発揮され、内容をしっかり押さえながらも読むスピードを速くすることができるようになります。
★ストレスの軽減
音読で脳の前頭前野が刺激されるとセロトニンが分泌されます。セロトニンは、興奮や攻撃を助長するアドレナリンを抑え、気持ちを落ち着かせる作用があります。音読により、ストレスを軽減して、リラックスした状態を整えることができます。
★コミュニケーション能力の向上
音読により活性化される脳の前頭葉は、コミュニケーション能力も司っています。また、音読することで、発声に慣れて滑舌が良くなったり、声を出すことへの苦手意識も軽減されるため、普段のコミュニケーションにも効果が発揮されます。
★自制心が育つ
脳の前頭前野は、感情をコントロールする役割も司っています。そのため、音読することは、気持ちを落ち着かせ、感情を制御することにも役立ちます。その積み重ねで、自制心が育ち感情に流されなくなっていきます。
★『小学生なら声に出したい音読366』
NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導を務め、著書『声に出して読みたい日本語』(草思社)では累計260万部を記録、日本語ブームの火付け人、明治大学教授 齋藤孝先生による小学生のための音読本の決定版です!
1日たった1分の音読習慣で、心と頭がスッキリ! 集中力、記憶力、語彙力が高まり、体の中からやる気がわいてきます。「雪にまつわる」「リズムが楽しい」「宮沢賢治神7」など52の週テーマで紹介、1テーマを1週間で音読できます。文字を目を追いながら声に出すことで集中力が身につき、体のリズムで何度も読むことであっという間に覚えてしまいます。そうやって覚えた言葉は大人になってもなかなか忘れません。小学校の授業でも「音読」が重視されていますので、小学生へのプレゼントにも最適です! また、大人の学び直しにもおすすめです。
難しい問題を解くよりも、むしろ簡単な足し算や引き算などの計算のほうが、はるかに活発に脳がはたらくことが「数と脳のはたらき」の実験でわかったそうです。この実験では、大学の名誉教授、大学生、小学生の脳のはたらきを調べたところ、子どもたちから物理学の専門家まで、誰の脳もまったく同じようにはたらいたそうです。つまり、短時間に頭のはたらきを鋭くさせたいときには、数をかぞえたり、単純な計算をしたりすると効果があるということがわかったそうです。多くの小学校で取り組んでいる「百ます計算」なども、その応用のひとつです。単純計算に集中すると、たった数分間で脳が勉強モードに入るというわけです。
音読による脳の活性化の度合いはスピードで決まりますが、計算では「速く」解く方が脳が活性化しますが、答えが正しくないと学習の定着にはならないので、「正確に速く」を目標にするといいそうです。例の「百ます計算」は、前回の自己タイムを上回ることを目標にします。競うのは自分自身なので、クラス全員でやっても各自の前回の自己タイムを上回ることが目標です。
★『くりかえし練習帳シリーズ 100マス はじめてのマス計算』
(三木 俊一 著)陰山英男先生推薦
やさしいマス計算からはじめて、100マス計算へとすすむドリルです。集中して計算をすることで、脳の力がのばせます!8マス、12マス、20マス・・・とゆっくり、でもしっかりとすすめます。おなじ問題を毎日つづけることで、まちがいも少なく、早くなります。
このドリルがおわったら「100マス練習帳」にすすみましょう。★『<教育技術MOOK>陰山メソッド 徹底反復「百ます計算」』
(陰山英男 著)
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本書は、この陰山メソッドの基本実践をご家庭でも完全に行えるよう構成。たし算、ひき算、かけ算、わり算の各プリントを2週間分(14枚)セット。
小学校3年生までに、音読と計算で脳を活性化させ、「読み・書き・計算」のスキルを磨き、
基礎的な学力を鍛えると、その後の学習が楽しくなること間違いなし。
次号は、「幼児期の読み聞かせの大切さ」
【公開予定日:2024年7月24日(水)】