『あつまさ先生の道しるべvol.25』~安心・安全な通園バスであるために~

2022年(令和4年)9月5日、静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」の送迎バスの中に3歳の河本千奈ちゃんが約5時間にわたって置き去りにされ、熱射病で死亡。

千奈ちゃんは発見時服を脱いだ状態。暑さに耐えられず脱いだとみられ、飲み干したとみられる空の水筒も。なんと悲惨な死亡事故。本当にかわいそうでしかたありません。親御さんの悲しみや憤りと悔しさはいかほどか…。70代の補助の乗務員は、最初に2歳児をバスから降ろし、千奈ちゃんら複数の3歳児には自分で降りるように声をかけただけで降りたかどうかの確認をしなかったと言う。普段の運転手に代わって、急きょバスを運転した園長兼理事長(73歳)は確認を怠った理由について「不慣れだった」と語り、8日付で辞任。あまりにも無責任で真摯な謝罪の態度ではない記者会見に、怒りを覚えたのは私だけでしょうか。
2021年(令和3年)の7月に福岡県中間市の「私立双葉保育園」で5歳児が9時間放置され熱中症で死亡した事件が起きたばかりなのに、その教訓が生かされず痛ましい事故が続発していることは残念でしかたありません。

 

そこで、過去の同様の事件を調べてみると

2003年 3月 岐阜県羽鳥市の私立幼稚園で3歳児が4時間放置、けがなどなし
2007年 7月 福岡県北九州市の「私立中井保育園」で2歳児が5時間放置され熱中症で死亡
2017年        埼玉県さいたま市の私立幼稚園で3歳児が5時間放置、健康上の異常なし
2018年 10月  北海道西興部村の保育園で2歳児が2時間放置、健康上の異常なし
2018年 10月 山口県長門市東深川の幼稚園で4歳児が1時間15分放置、健康上の異常なし
2020年 8月 福岡県久留米市の私立保育園で2歳児が約10分間放置、けがなどなし
上記から、ここ数年全国各地で(北海道でも)同様の事件が続発していたことがわかります。
置き去り事件が起きる背景

どの事件も、運転手と同乗の職員による二重のチェックがなされなかったための初歩的なミスが原因かと思われます。他にも下記のような要因が思い当たります。

子どもを預かる施設は、どこもスタッフが不足していて運営が大変。薄給のうえ、労働時間も長いため十分な数の保育士や幼稚園教諭を確保することが難しくなっているのでは。

運転手の確保も大変で、人数に余裕がない中でのバス運行では、施設長もその業務に携わるところもあるのでは。

施設が作成している「安全管理マニュアル」や「ヒヤリハット報告書」の記入事項について再発防止のためのミーティングが形骸化しているのでは。

新型コロナウイルス感染防止対策(降車後に座席シートや手すりを消毒する等)がマニュアル通り実施されていないのでは。

ギリギリのスタッフで過密な業務に追われていると、職員間のコミュニケーションが不足し情報共有が疎かになっているのでは。

 

再発防止のための対策
函館市内の通園バスの実態と対策
函館市では上記の事件を受け、市内の保育所、幼稚園、認定こども園のうち、バスで子どもを送迎している23施設に対して緊急の実地調査を目下実施中。なお、23施設のうちバスを自ら保有しているのは21施設で、運転手も含め運行を業務委託している施設は8施設。
函館市の子どもサービス課は、今回の実地調査で各施設で作っている安全確保に向けたルールが形骸化していないか、実効性があるかを調べ、事件、事故防止につなげていく考え。(北海道新聞9/17 一部引用)

政府の緊急対策(園バス安全装置が来年4月から義務化)
政府は来年4月から、全国の幼稚園や保育所、認定こども園などのバスに安全装置を義務付ける緊急対策を10月12日に取りまとめた。対象は約4万4千台に上る。違反した園は業務停止命令の対象となる。義務化後1年間は、バスに所在確認の点検表を設置するなど代替手段を認めるとのこと。安全装置の設置は、上限20万円で費用の9割を補助する方向。安全装置が求められる対象には、特別支援学校が使うバスや、障害のある子どもが乗る放課後等デイサービスのバスも含まれる。また、小中学校と放課後児童クラブの約1万1千台は安全装置の設置を義務にしないものの、費用を補助する方針。

【国土交通省が検討している安全装置】
☆バス後方に取り付けて座席の状況確認を促すブザー
☆置き去りにされた子どもを検知するセンサー
☆置き去りにされた園児が車内のボタンを押すと車外に警報音が鳴り響く装置等

 

安全装置に頼りすぎない対策も同時に

園児をバスから降ろした後の車内確認は基本中の基本。日ごろから乗降確認や出欠確認が園全体の組織で確実にできていれば園バス置き去り事故は防げたはず。人的ミス(ヒューマンエラー)を補うシステム(安全装置等)が義務化されれば、園バス置き去り事件は皆無になるでしょう。

 

子どもたちが毎日過ごす大好きな幼稚園。朝送り出した子どもたちが、元気に笑顔でお家に帰って来てほしい、ただただそう願うばかりです。

 


 

次回は『黒松内 旧熱郛小学校 校舎解体前の”最後の授業”』
1998年3月に閉校し、校舎を解体することが決まった旧熱郛小学校。あつまさ先生は当時、熱郛小学校の教頭先生でした!卒業生や先生方が集まり、校舎に最後のお別れ。その様子を11月12月と2回にわたりご紹介します♪

次回公開予定は、2022年11月16日(水)です